ポジティブ・アクション(女性労働者の能力発揮促進のための企業の自主的取組)のガイドライン及びワークシート


女性労働者の能力発揮促進のための企業の自主的取組に関するガイドライン

はじめに

(取組の視点)
 女性と男性が社会のあらゆる分野に対等なパートナーとして積極的に参画できる社会を作ることは、我が国にとって将来を決定する大きな課題となっています。雇用の場においても、女性労働者が男性と均等な取扱いを受け、その能力を十分発揮して充実した職業生活を送ることができるようにすることが重要です。そのためには、まず、企業において男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、労働基準法等が遵守されなければなりません。しかしながら、これらの法の遵守だけで女性が職場においてその能力を十分に発揮できるとは限りません。社会に根ざす固定的な男女の役割分担意識に基づく慣行・通念から生じる差が存在し、企業においても過去の経緯から女性が活躍しにくい状況や慣行も存在しています。このような雇用の場における事実上の差を解消するためには、企業が法に基づき差別的取扱いを撤廃することに加え、さらに、女性の能力発揮を促進し、その活用を図る積極的な取組(ポジティブ・アクション)を行うことが必要です。

(21世紀に向けての企業経営)
 来たるべき21世紀に向けての経済社会環境への変化への的確な対応は、業種や規模を問わず、すべての企業経営にとって最も重要かつ不可欠な課題となっています。特に、少子・高齢化、経済のサービス化・ソフト化、情報通信の高度化、長期雇用システムの変化、就業意識の多様化など様々な状況の変化が想定される中で、真に女性の能力を活用できるか否かは、企業の競争力、業績に大きな影響を与える要因になると考えられます。こうした状況の中で、女性の能力の活用は今後最も重要な企業戦略のひとつとなっていくものと考えられ、女性の能力発揮を促進し、その有効な活用を図るため積極的な取組を行うことは、企業経営の観点からも有効です。

(ガイドラインの性格)
 本ガイドラインは、以上のような観点から、企業が女性の能力発揮の促進のための雇用管理の改善へ積極的に取り組んでいく上で参考となる考え方及び具体的取組方法の例を示すものです。その具体的な取組については、各企業での個々の検討に委ねられるものであり、達成すべき女性比率等を固定的・画一的に定め強制すること等の結果の平等を求められるものではありません。
 本ガイドラインを参考に各企業ができることから積極的に取り組むことを期待します。


ガイドラインの構成

 ガイドラインは、次の構成から成っています。
  1. 現状の分析と問題点の把握
  2. 具体的取組計画の作成
  3. 具体的取組の実施
  4. 具体的取組の成果の点検と見直し
  5. 積極的取組を行うための体制とコンセンサスづくり



1 現状の分析と問題点の発見

 企業において女性の能力発揮を促進していくためには、まず、女性労働者が現在どのように活用されているかを客観的に把握し、男女労働者の雇用状況にアンバランスがある場合には、その原因を分析し、問題点を発見することが重要です。 その場合、ワークシートを活用しながら、企業の規模や雇用管理の状況によって工夫をすると効果的です。
 また、ワークシートと併せて、次の (例) を参考に様々な方法を組み合わせ、広く問題点の発見に努めることが望まれます。
(例)  ・アンケート、自己申告、個別ヒアリング、グループディスカッション等による労働者の意識、意見の聴取・把握
・各部門の人事責任者からの聴取
・労働組合を通じての意見の収集


ワークシートの概要

I データによる状況把握
  1 従業員構成等の概要
2 部門別の従業員構成
3 資格等級・役職等級別の従業員構成
II 雇用管理のステージ別点検
   募集・採用
  応募・採用の状況
  男女比に大きなアンバランスがある場合、募集方法、採用条件、選考方法について点検
 配置・昇進
  男女比に大きなアンバランスがある部門やグループ (職種、職掌・コース等) がある場合、その原因の分析
  一定以上の年齢 (又は勤続年数) の女性がいるにもかかわらず、女性の管理職、役職者が少ない場合、その理由についての分析
 育成・教育訓練
  日常業務を通じての育成や教育訓練の状況についての分析
 継続就業
  新規学卒採用者の勤続年数別継続就業率の比較
  女性の継続就業率が低い場合、退職原因の分析及び職業生活と家庭生活の両立支援制度の整備状況の点検
III 職場環境・風土
   職場の雰囲気、慣習、社員の日常的行動についての点検
 セクシュアルハラスメントに関する問題の発見


2 具体的取組計画の作成

(1) 目標の設定及び具体的取組策の策定
 1の分析に基づき、女性労働者の能力発揮促進のための具体的取組計画を作成します。
 具体的取組計画の作成に当たっては、現実に即した具体的な目標を設定し、それに沿って、発見された問題の解決に効果的な具体的取組策を検討し、策定します。
 この場合の企業の取組については、「女性のみを対象とする又は女性を有利に取り扱うもの」と、「男女両方を対象とするもの」とに分けて考えることができます。
 「女性のみを対象とする又は女性を有利に取り扱う取組」は、従来の取扱い等により女性に現実に生じた男性との差について、その是正を目的として暫定的に行うものです。
 「男女両方を対象として行う取組」は、男女を区別していない基準ですが、女性が事実上満たしにくいものについて、その基準や運用を見直すことや、個人としての能力に着目した公正で透明な人事制度の確立、職業生活と家庭生活との両立を容易にする取組等であり、継続して行われる必要のあるものです。

(2) 期間の設定
 具体的取組計画においては、目標を達成するための具体的取組を実施する目安となる期間を設定することが効果的です。
 また、中間評価時点や定期的点検時点を設定し、目標達成のための必要なフォローアップを行うことが望まれます。

(3) 労働者、とりわけ女性労働者の意見・要望の聴取
 具体的取組を検討していくに当たっては、労働者、とりわけ女性労働者の意見や要望を聴取して実質的かつ効果的な計画の立案を行うことが望まれます。

(4) 具体的取組計画の例
 具体的取組計画の策定に当たっては、以下の例が参考となります。各企業の状況に応じた目標を設定し、具体的取組を検討していくことが必要です。


目標 1:女性の採用拡大
〔具体的取組〕
 女性のみを対象とする又は女性を有利に取り扱う取組
   女性の比率が少ない職種において、女性の応募・採用が少ない場合の求人方法の再検討
(イ) 求人広告や会社案内等の図や写真に女性を登場させたり、文面において女性の活躍を期待していることを明記
(ロ) 求人先学校の見直し (女性の多い学部、大学等を含める)
 男女両方を対象とする取組
   男女共通の募集・採用条件であっても、女性が事実上満たしにくい場合、その条件の必要性や妥当性について検討
選考方法の改善
(イ) 選考に当たって、男女の固定的役割分担意識をなくすための役員、面接・選考担当者への研修
(ロ) 男女に中立的な選考のための面接マニュアルや面接における質問事項等の作成、見直し
(ハ) 不採用理由の記録、分析
(ニ) 面接・選考担当者に女性も登用
働きやすい職場環境の整備
職業生活と家庭生活との両立支援制度の充実

目標 2:女性の職域拡大
〔具体的取組〕
 女性のみを対象とする又は女性を有利に取り扱う取組
  女性がいない、又は少ない職種、職域への女性の配置のために必要な教育訓練の実施
 男女両方を対象とする取組
   建設業、製造業等の作業における体力面での個人差を補う器具、設備等の導入
ロッカー設備、休憩室、トイレ等の職場環境の整備 (特に女性が少ない職場へ女性を配置する場合)
女性を初めて受け入れる、又は受入れ経験の乏しい管理職に対する研修の実施
日常業務を通じての社員の育成と的確な指導
幅広い職業能力を育成できるような配置や配置転換の実施
自発的な知識・技術の習得のための援助の実施
OJT の充実
自己申告制度の導入、活用

目標 3:女性管理職の増加
〔具体的取組〕
 女性のみを対象とする又は女性を有利に取り扱う取組
  女性の管理職候補者を対象とする研修の実施 (女性管理職がいない、又は少ない場合)
ー定の役職への昇進・昇格試験を受験するように奨励 (当該役職に女性管理職がいない、又は少ない場合)
いわゆる総合職等への転換の奨励、支援
 男女両方を対象とする取組
  昇進・昇格基準の明確化、透明化
所属長、人事担当者等とのキャリア形成にかかる個別面接の実施
コース別雇用管理制度における柔軟なコース間転換制度の設定、実施、見直し

目標 4:女性の勤続年数の伸長 (職業生活と家庭生活との両立)
〔具体的取組〕
 男女両方を対象とする取組
  育児・介護休業法で義務づけられた両立支援措置を上回る制度の導入
(イ) 1年を超える育児休業制度
(ロ) 1歳以上の未就学児を養育する労働者に対する短時間勤務制度、フレックスタイム制度等
(ハ) 3ケ月 (対象家族1人につき1回) を超える介護休業制度
(ニ) 家族を介護する労働者に対する短時間勤務制度等
(ホ) 育児・介護費用の助成
看護休暇制度の導入
配置転換に際しての家族的責任を負う労働者への配慮
労働時間短縮の取組

目標 5:職場環境・風土の改善
〔具体的取組〕
 男女両方を対象とする取組
  男女の役割分担意識に基づく慣行の見直し
男女の役割分担意識解消のための意識啓発研修の実施
セクシュアルハラスメントの防止のための取組の充実


3 具体的取組の実施

 計画に基づき、具体的取組を実施します。


4 具体的取組の成果の点検と見直し

(1) 取組の成果の点検及び評価
 具体的取組の成果については、一定期間ごとに点検し、評価を行っていくことが望まれます。その際、実施成果について社内に公表していくことが、具体的取組を推進するに当たり効果的です。

(2) 取組計画の見直し
 十分な成果が得られていない取組については、その原因を究明の上、必要があれば、体制の見直しを含め、計画の見直しを行っていくことが重要です。


5 積極的取組を行うための体制の整備とコンセンサスづくり

(1) 経営トップの理解と関与
 女性の活用、能力発揮促進のための積極的取組には、企業全体で取り組むことに意味があります。そのためにも、経営の最高幹部クラスがその必要性を十分理解し、その決断の下に実施していくことが望まれます。

(2) 実行機関の確立と必要な権限の委譲

 実行機関は、全社的規模で情報を収集、分析し、また、全社的に具体的取組を実施していくよう求めていくこととなります。このため、実行機関は、経営の最高機関から必要な権限を委譲され、職務として取組を行うことが効果的です。
 また、実行機関は、単に人事担当部局のみに任されるのではなく、全社的な取組となるように構成され、女性が参画していることが望ましいといえます。

(3) 取締役会等の経営陣の意思決定と社内でのコンセンサスづくり
 具体的取組計画を作成し、実施していくことについては、取締役会等の最高意思決定機関で合意を得るとともに、その具体的取組を経営計画の中に盛り込むなど、企業全体の取組としての位置づけを明確にすることが重要です。
 また、必要に応じて取組の方針や内容を全社的に知らせることが、社内のコンセンサス形成に有効です。




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